第110巻『「再国民化」に揺らぐヨーロッパ
第110巻
『「再国民化」に揺らぐヨーロッパ
新たなナショナリズムの隆盛と移民排斥のゆくえ』
高橋 進・石田 徹 編
新評論 2016年3月刊
ISBN 978-4-589-03737-4
まえがき
第Ⅰ部 「再国民化」の視角
第1章 欧州金融・債務危機と「再国民化」―野田昌吾
―「小文字の統合」の論理とその逆説
1 欧州危機と「再国民化」
2 「統合の終焉」の帰結
3 「小文字の統合」と欧州金融・債務危機
4 「首脳の出番」の政治学
5 メルキァヴェリズム―「意図的な躊躇」とルールの重視
6 政治を迂回する統治とその危機
第2章 エスノ・リージョナリズムの隆盛と「再国民化」―高橋進
―「国家」・「国民」の分解か「礫岩国家」化か
1 「再国民化」とエスノ・リージョナリズムの競合
2 サブステイト・ナショナリズム政党による政治的動員
3 エスノ・リージョナリスト政党の定義と特徴
4 各国のエスノ・リージョナリスト政党
5 創立時期と選挙の得票率、政権参加
6 エスノ・リージョナリスト政党の展開の二つの類型
8 ヨーロッパの「礫岩国家」化と「新しい中世」への移行
第3章 福祉政治における「再国民化」の言説―石田徹
―福祉ツーリズム、福祉ポピュリズムをめぐって
1 福祉政治における「再国民化」の意味
2 反EU、反移民の政治勢力の動向―ポピュリズムの分岐
3 福祉ツーリズムの言説をめぐって
4 福祉ポピュリズムの概念をめぐって
第4章 リベラルなヨーロッパの憂鬱―野田葉
―EU市民権と移民をめぐる一考察
1 EU市民権とヨーロッパのリベラル化
2 EU市民権の拡大
3 リベラルなEUの超国家性がもたらすもの
4 ヨーロッパ・リベラリズムの抱える矛盾
5 誰のためのリベラリズムなのか?
第Ⅱ部 ナショナリズムと「再国民化」の諸相
第5章 「再国民化」と「ドイツのための選択肢」―中谷毅
―移民問題およびユーロ問題との関連で
1 はじめに―揺れるヨーロッパと「再国民化」
2 燻る反移民・反イスラム
3 ヨーロッパへの懐疑
4 選択肢としての「再国民化」―「ドイツのための選択肢(AfD)」
5 おわりに―AfDの今後と「再国民化」
第6章 Pegida現象と「現実にある市民社会」論―坪郷實
1 2014年ヨーロッパ議会選挙の結果が意味すること
2 Pegida運動の目標・組織、そして「参加者は誰か」
3 規範的市民社会と「現実にある市民社会」
4 Pegida現象に対する市民社会の対抗戦略
第7章 英国におけるナショナル・アイデンティティ論―小堀 眞裕
―どういう意味での「再国民化」論が可能か
1 英国に関する多様なアイデンティティ
2 Britainかイングランドか、それともUKか
―英国名の歴史的変遷
3 ナショナル・アイデンティティに対する歴史的分析
4 ナショナル・アイデンティティに対する現代的動向の分析
5 2015年総選挙に至る過程での議論
6 まとめ
第8章 フランスの「欧州懐疑主義」と「再国民化」―畑山敏夫
―「国家主権」をめぐる攻防
1 「脱国民化」から「再国民化」へ
―超国家的統合へのリアクションとしての欧州懐疑主義
2 超国家的統合への逆風
―「主権主義」という対抗運動の生成と発展
3 「再国民化」とナショナリズムの誘惑
―「再国民化」と「自国民優先」
4 「再国民化」とFNの優位
第9章 植民地からの引揚者をめぐる政治―藤井篤
―ピエ・ノワールと脱植民地化後のフランス
1 アルジェリア戦争とピエ・ノワール
2 引揚げるピエ・ノワールたち
3 損失財産の補償と自己組織化
4 文化的アイデンティティと歴史的記憶の承認
5 ピエ・ノワールと政治
第10章 オーストリアの移民政策―馬場優
―最終目標としての国籍取得
1 オーストリア人またはオーストリア国民とは誰か
2 オーストリア人及びオーストリア概念をめぐる歴史的変遷
3 移民の政治問題化(1940年代-1970年代)
4 自由党の台頭と移民の再政治問題化(1980年代-1990年代)
5 国民・自由(・未来同盟)連立政権の統合政策(2000年-20006年)
6 大連立政権の統合政策(2006年-現在)
第11章 スウェーデンにおける「再国民化」と民主政治のジレンマ―渡辺博明
1 右翼ポピュリズム政党の本音
2 ナショナリズムとスウェーデン
3 移民政策と福祉国家
4 スウェーデン民主党とその主張
5 ナショナリズムと民主主義
あとがき