第79巻『中国の環境問題と法・政策―東アジアの持続可能な発展に向けて―』
第79巻
『中国の環境問題と法・政策
―東アジアの持続可能な発展に向けて―』
北川 秀樹 編著
法律文化社
ISBN 978-4-589-03080-1
目 次
はしがき
凡例
序論 環境問題と法・制度
第1章 環境に関する法・政策の沿革と現行法 : 北川 秀樹
Ⅰ―沿革
1.中華人民共和国建国前
2.中華人民共和国建国後
Ⅱ―現行法
1.法体系
2.立法計画
Ⅲ―法執行
第2章 環境法の最近の進展と直面する課題 : 王 曦
Ⅰ―政権党の環境保護理念の新たな飛躍
Ⅱ―環境立法の新たな進展
Ⅲ―環境保護政策の新たな進展
Ⅳ―環境保護制度の新たな進展
1.省エネルギー・汚染物排出の削減
2.循環経済
3.クリーン生産
4.環境影響評価制度立法の新たな進展
5.環境税
6.環境法執行監督の新制度
7.環境観測能力建設の新たな進展
8.社会監督と公衆参加
まとめ
第1部 環境汚染と紛争
第3章 水質汚染の現状と規制対策 : 王 凱軍・彭 応登
Ⅰ―水環境汚染の現状
1.水質汚染と水資源不足の深刻化
2.都市汚水に対する有効対策の欠如
3.面源汚染の深刻さに対する認識不足
Ⅱ―中国の都市汚水処理対策の現状と技術的課題
1.都市汚水処理場の建設現状
2.都市汚水の汚泥処理技術上の問題点
Ⅲ―面源汚染の規制と技術的課題
1.化学肥料と農薬による汚染
2.農村における面源汚染
3.家畜・家禽飼育業による汚染現状
Ⅳ―水質汚染規制の主な政策と対策
第4章 自動車排出ガス汚染と規制対策 : 彭 応登
Ⅰ―自動車排出ガス汚染と規制の現状
1.自動車排出ガス汚染の現状
2.自動車排出ガス規制の現状
Ⅱ―汚染防止対策
1.技術対策
2.管理対策
第5章 環境公害訴訟の事例研究
――福建省寧徳市屏南県のケース :櫻井 次郎
はじめに
Ⅰ―現地の状況と事実関係
1.現地の概況
2.現地の汚染状況
3.原告団の構成
4.被告について
5.地域開発政策と被告との関係
Ⅱ―判決に至るまでの経緯
1.被害の発生と見舞金
2.訴訟費用の募金活動
3.福建省環境保護局による公聴会
4.屏南県政府による座談会
5.メディア報道
Ⅲ―判決の検討
1.本件訴訟の請求物
2.判決の概要
3.本判決についての考察
Ⅳ―判決後の状況
1.判決の執行状況
2.原告代表人への圧力
まとめ
第6章 環境公益訴訟の現状と課題 : 汪 勁
Ⅰ―問題点の整理
Ⅱ―中国環境公益訴訟理論研究の到達点
1.環境公益訴訟制度の発展過程の考察
2.環境公益訴訟における原告適格理論の修正
Ⅲ―中国環境公益訴訟制度の体制上および法律上の障害
1.政治制度および体制の欠陥に起因する障害
2.立法制度に存する問題に起因する障害
3.司法制度に存する問題に起因する障害
Ⅳ―結語:中国の環境公益訴訟制度の課題
第2部 生態環境保全
第7章 西部大開発の現状と課題
――均衡ある、持続可能な発展に向けて : 蔡 守秋
Ⅰ―中国の西部大開発の現状
Ⅱ―中国西部大開発にみられる主な課題
Ⅲ―西部大開発のさらなる推進のための対策
第8章 中国の砂漠化面積の拡大と近年のわが国への黄砂の飛来状況 : 増田 啓子
はじめに
Ⅰ―黄砂および黄砂観測
Ⅱ―黄砂の発生源地と飛散する条件
Ⅲ―黄砂の成分とその影響
1.黄砂の成分
2.黄砂の影響
Ⅳ―日本における近年の黄砂現象
1.2006年春の黄砂:黄砂日数が多かった理由
2.2007年春の黄砂:3月末から4月の砂嵐と黄砂の飛散状況
Ⅴ―中国の生態面積(耕地面積、草地面積および森林面積)の変化
1.中国の森林面積
2.草地の砂漠化面積
3.耕地の砂漠化面積
4.中国の砂漠化・砂質化面積
まとめ
第9章 自然保護区の現状と直面する課題 : 馬 乃喜
Ⅰ―自然保護区事業の発展
1.創設期(1956~65年)
2.回復期(1966~95年)
3.発展高揚期(1996年以降)
Ⅱ―自然保護区の科学的管理
1.管理の仕組みと発展方向
2.生物多様性の保護
3.国際協力と交流
Ⅲ―自然保護区:持続可能な発展モデル
1.生物圏保全のためのセビリア綱領
2.自然保護区の持続可能な発展
Ⅳ―持続可能な発展を実現するための条件
1.政策的助成
2.科学的研究
3.生態保護
4.資源開発
5.科学的管理
第10章 生態移民政策と課題 : 北川 秀樹
はじめに
Ⅰ―生態移民の定義
Ⅱ―生態移民の必要性
Ⅲ―政策の実施による改善効果
Ⅳ―生態移民の問題点
Ⅴ―生態移民の改善策
むすびにかえて
第11章 動物保護政策の歴史と法・政策の課題 : 劉 楚光
Ⅰ―歴代の野生動物保護政策
1.古代の野生動物保護政策
2.中華民国時代の動物保護政策
Ⅱ―現代の野生動物保護政策
1.人民中国成立初期の法律・法規
2.文革後の法律・法規
3.動物保護の管理体制
4.国際協力と国際条約への加盟
Ⅲ―保護政策の成果
Ⅳ―現代野生動物保護における司法実務
1.野生動物保護法中の刑事責任
2.刑法中の野生動物保護法関連の罪名
3.法律・法規と政策の統一性
4.司法実践中に直面している問題
第3部 公衆参加
第12章 環境保護公衆参加立法の現状と展望 : 王 燦発
はじめに
Ⅰ―中国の公衆参加と環境保護立法の沿革と現状
1.環境保護の公衆参加に関する憲法と関連法律・法規の規定
2.環境保護における公衆参加に関する環境保護専門立法
Ⅱ―中国の環境保護における公衆参加立法に存在する主要問題とその原因分析
Ⅲ―中国の環境保護における公衆参加立法の整備と改善の道筋
Ⅳ―中国の環境保護における公衆参加法律制度の構築
1.立法の枠組・構成
2.主要制度の構築
第13章 中国の環境政策における公衆参加の促進
――上からの「宣伝と動員」と新たな動向 : 大塚 健司
はじめに
Ⅰ―環境政策における公衆参加の展開
Ⅱ―地方環境政策に対する監督検査活動―上からの宣伝と動員
1.1993~97年
2.1998~2002年
3.2003年以降
Ⅲ―情報公開と公衆参加に関する事例
1.政府主導による環境情報の公開
2.企業環境対策情報公開制度
3.円卓会議
むすび
第14章 環境影響評価制度と公衆参加 : 北川 秀樹
はじめに
Ⅰ―中国の公衆参加の沿革
1.制度全般
2.環境行政
Ⅱ―環境影響評価制度における公衆参加
Ⅲ―公衆参加の事例
Ⅳ―公衆参加の課題
むすびにかえて
第15章 中国の環境NGO : 相川 泰
はじめに
Ⅰ―中国で活躍する環境NGOについての概観
1.NGOの定義と類義語の整理
2.中国で活動する環境NGOの分類
Ⅱ―中国「草の根環境NGO」の「草の根」化とネットワーク化
1.前 史:「天安門事件」の影響(~1992年)
2.第1期:都市部の知識人を担い手とする環境NGOの登場(1993~97年)
3.第2期:環境NGOの「草の根」化とネットワーク化の本格化(1997~2002年)
4.第3期:個別・具体的な活躍(2003年~)
むすび
第4部 地球環境問題と環境協力
第16章 2013年以降の地球温暖化防止の国際的枠組交渉の現状と途上国の「参加」問題
: 髙村 ゆかり
はじめに
Ⅰ―地球温暖化問題の仕組みと影響
Ⅱ―地球温暖化交渉の到達点と課題
1.地球温暖化交渉の展開
2.温暖化交渉が生み出した2つの条約:国連気候変動枠組条約と京都議定
3.現行の国際的枠組の到達点と課題
Ⅲ―「2013年以降(Post-2012)」をめぐる温暖化交渉の現状
1.先行する研究と2013年以降の国際的枠組に関する主な提案
2.複線的に進行する国際交渉
3.枠組条約・京都議定書プロセスにおける交渉の現状
4.G8プロセス
Ⅳ―「2013年以降」をめぐる国際交渉における途上国問題
1.京都議定書交渉以上に難しさを増す温暖化交渉
2.2013年以降の制度構築に影響を及ぼす炭素市場
3.途上国の「参加」の形態
4.「2013年以降」をめぐる中国の現状と動向
むすびにかえて
第17章 「京都議定書」のクリーン開発メカニズムの中国における実施 : 張 新軍
はじめに
Ⅰ―「議定書」の中のCDMと中国におけるCDMプロジェクトの進展
1.CDMの由来
2.中国におけるCDMプロジェクトの進展
Ⅱ―中国政府は行政立法によってCDMプロジェクトを管理する
1.中国政府のCDMプロジェクト管理の1:「弁法」の中の(手続)と実体的要求
2.中国政府のCDMプロジェクト管理の2:「弁法」24条の収益分配条項
Ⅲ―収益分配条項に対する評価
1.中国政府が収益分配をする正統性:CDMを1つの条約権利と資源とする
2.中国政府が収益分配をする必要性:条約目的における持続可能な発展の
公共利益要求
3.CDMの中の市場メカニズムの要求:CERの所有権はCDMプロジェクト
投資とCER取引の前提とする
4.収益分配条項の中国国内法における類推
5.結論
第18章 エネルギー問題と国際協力 : 李 志東
はじめに
Ⅰ―高度経済成長の陰に潜むエネルギー問題と環境問題
Ⅱ―経済社会とエネルギー需給の未来像
Ⅲ―総合エネルギー対策の動向、特徴と課題
Ⅳ―日中中心の国際協力について
第19章 日本の対中環境協力 : 森 晶寿
はじめに
Ⅰ―日本が中国に対して国際環境援助を行う動機
1.ゲーム理論分析からの含意
2.日中間の国際環境協力をめぐる状況
3.日中間の国際環境協力と環境ODA
Ⅱ―環境ODAに対する両国政府の誘因の低下
1.環境ODAによる大気汚染・酸性雨対策事業支援の困難
2.日本の対中環境円借款の環境汚染排出削減効果
3.日本の対中環境円借款の事業内容の変化
Ⅲ―代替的アジェンダの設定の試み
1.エネルギー・資源安全保障
2.京都議定書後の温室効果ガス削減の国際枠組の構築
おわりに